若者と老人とのルームシェア

世田谷区長の保坂展人さんが書かれた記事 「高齢者の孤独」を癒す「学生・若者とのホームシェア」の可能性は を読みました。

世代交代に伴う空き家の増加や、その活用がされずに廃屋が増えていることが社会問題となりつつありますが、世田谷区でも空き家をどのように活用するかという研究がなされているようです。また、同じ文脈の中で、フランスのNPOによる高齢者と若者のルームシェアマッチングの話や、オランダでの老人ホームに若者を住まわせる話なども紹介されています。

Black and White
photo credit: Brian Auer

いざという時のトラブル解消のバックアップ等の仕組みを整えて、高齢者の孤独を癒し、そのことと若者・学生への住宅支援が両立する仕組みに取り組んでいきたいと考えています。

日本の場合、投票などの政治行動に置いて高齢者の人数も参加率も高いため、行政としてはどうしても高齢者に訴求する箇所がより多く取り上げられることが多い気がしますが、単に若者を労働力やヘルパーとして使うということではなく、高齢者とルームシェアする若者にも十分なメリットがなければならないでしょう。

若者の敬老精神やボランティア意識につけこんで依存するような形ではなく、そのルームシェアをする若者にとっても得があるようにとなると、やはり一番は家賃などの対価が市場に比べて割安であること、など思います。

不動産を所持して使わない個室やスペースを持て余している人が、ルームシェアジャパンのような掲示板を使って住処を必要としている若者にそれを安価に提供してくれれば、東京のような大都会の住みづらさも少しは解消されるのではと期待しています。

一生涯を通して(部屋が空いている時に)ルームシェアをするということについては、「ルームシェア入門」でも書いたことがあります。

生涯ルームシェア、という考え方

ワンルームマンション規制は将来のルームシェアを増加させるかも

東京都心の多くの区で、若者向けのワンルームマンションが建てにくくなる、いわゆる「ワンルームマンション規制」の条例が制定されている、というニュースがありました。

ワンルームマンションの建築を規制する区の条例が、都内で相次いで施行されるなど規制が広がっている。面積が25平方メートル未満の部屋を持つマンションが建てにくくなるというものだ。面積を増やせば家賃が高くなることも予想され、学生や高齢者が住みにくくなるという批判もある。しかし、こうした条例が制定される背景には、単身者のゴミ出しのマナーの悪さや自転車の路上駐輪が問題化していることがある。

25平方メートル未満「ノー」 都内で広がる「ワンルームマンション規制」 : J-CASTニュース

条例の内容は区によって違いますが、20平米、25平米以下といったサイズが小さなマンションをたくさん作れないようにするというものです。既にその地域に住んでいる人たちの希望によって、単身者が借りられる(狭いけど)安い賃貸を減らす目的で制定されているようです。

記事では、ワンルームマンションに住む人に対する苦情(ゴミ出しのルールを守らなかったり、自転車の停め方が悪かったり、騒音がひどかったり)がある、と文京区の担当者に語らせていますが、ファミリーであれば必ずマナーが良いわけでもないでしょうし、区や政治に働きかける時間や能力のあるファミリー世代が、ばらばらで投票率も少ないであろう若者世代を遠ざけようとしているようにも見えますね。

ワンルームマンションを作りにくくしたからといって、都心の一人暮らしの独身者や若者が増えなくなるわけではないでしょう(日本全体では人口減少でも東京は増加)。このような規制が続くと、既存住民が望むファミリー向けのマンションは「作れるけど借り手不足」、ワンルームマンションなどが対象にしていた独身の若者は「ワンルーム不足で規制の緩い郊外暮らしを余儀なくされる」ということも起こるかもしれません。

そうなると、ファミリーマンションを活用して安く住める「ルームシェア」は、都心部でますます希少で価値のある選択肢となるかもしれませんね。そもそもワンルームマンションは使用時間の短いキッチン・バス・トイレなどを一人一人が持たなければいけない非効率な暮らし方で、海外ではファミリー向けでルームシェアすることで若者や独身者もファミリーと同じように過ごせていたわけですから。

シリコンバレーの意識高すぎるルームシェア募集「スタートアップの城」

アメリカ、シリコンバレーのSUpostのルームシェア募集掲示板に載っているものすごいルームメイト募集記事が、その募集条件の条件の多さにIT業界人たちの興味を引いているようです。

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スタンフォード大学の近く、ウッドサイドにあるこのチューダー朝様式の豪華ハウス。チューダー朝様式のデザインだそうです。このルームシェア物件は、自身もウェブサイトまで持っており、「スタートアップ・キャッスル」と称しています。

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ITやバイオなどの分野で大学を出るか出ないかといった若者達が起業(スタートアップ)する文化がアメリカ、特にシリコンバレーにはありますが、まさにそういう志向を持った人たちが集まり、自分たちと共感できる仲間を探しているというわけです。

ただ、スタートアップ志向の人が豪華なお城に住む意味がどれぐらいあるのか、そして彼らのシェアメイトへの要件がものすごくて話題になっているわけですが…

このお城の新しい仲間になるために必要なのは、

  • 最高レベルの学位を持つか、高度な数学・科学が必要な仕事についていること
  • 週に15時間は運動していること
  • 車での通勤は20%以下であること(自転車通勤者!)
  • よく整理整頓されたシステムと共通のルールを好むこと
  • 犬を飼うのが好きなこと

まあこれぐらいなら要件に合う人もいるでしょう。しかし次に「以下にあてはまるような人はお断り」のリストも続きます。

  • 週に4時間以上、テレビや映画を見たり、ビデオゲームなどで遊ぶ
  • 2つ以上イレズミがある
  • 2回以上デモ抗議などに参加したことがある
  • 週に3回以上、ソーシャルメディアに投稿する
  • 露骨な歌詞の音楽を一日に何度も聴く
  • 週に3度以上化粧する
  • 500ドル以上する服・靴・時計・ハンドバッグ等を持っている
  • 請求書を誰か他人に払ってもらったことがある
  • 親に貰った車に乗っている
  • 親から日常的にお小遣いやプレゼントを貰っている
  • 週に2個以上スマホアプリを入手している
  • 冷蔵庫スペースを大量に使う複雑なダイエットをしている
  • 週に4杯以上アルコールを飲む
  • 年に3回以上マリファナを吸う
  • 精神科医に処方箋を書いてもらったことが2回以上ある
  • それ以外のドラッグを人生で3回以上やったことがある

どう思いますか? 最近のアメリカ・カリフォルニアの人たちの嗜好が透けて見えるリストですね。環境や健康を気にするのはクールなんでしょうし、起業などしたいという人なら親からちゃんと自立してるのは望ましいということでしょう。嗜好品やドラッグについては、日本とは基準が違うんだなーと感じさせられます。

しかし、僕ならこんなうるさい人たちの所には入りたくないですね。シリコンバレーの人たちがツイッターなどで反応している様子を見ても、

https://twitter.com/agolis/status/598582038439002112

「地獄のようなところに見える」

「毎日2時間も運動するの!」

など、あまり好意的なものは多くないようです。

ただお城なだけでなく、ジムや図書室、イベントスペースなど多数の共用設備を持っているこのハウスシェア、個室が1750ドルから、ドミトリーは1000ドルからということで、東京なんかよりはるかに家賃が高い現在のシリコンバレーなので異常ということはないですが、さすがの値段です。

ルームシェアジャパンを「起業」で検索してみると、やはり起業を目的とした人たちで一緒に住みましょうというものや、オフィスシェアでオフィスを共用しましょうという呼びかけはあります。同じ目標・近い目標を持つ人とシェアをして頑張ろう、という事自体はとてもいいことだし意味もあると思います。

via Fusion Kevin Roose(Digg創業者)