ネットの掲示板で連絡した相手は、連絡がついたというそれだけの状態ではまともな相手か詐欺師かはまったくわかりません。
安全な取引のための大原則
- 会ってもいない相手に送金しない
- 部屋も見ずにお金を渡さない
- 契約書も領収書も受け取らずに現金を渡さない
- 「代理」と名乗る人物から借りようとしない
- 送金に短い〆切を設定したり急がせたりする相手とは取引しない
特殊な条件で上の項目を守れない場合は、諦めて他の物件を探すか、(ルームシェア初心者にはオススメできませんが)他の情報を多数集めて相手が詐欺師ではないという確証を得るかする必要があります。
お金や個人情報をいきなり相手に送らない
YahooメールやGmailなどで連絡しただけの相手に、顔も見ず物件の見学も行かずに遠くから銀行振込でお金を送ったら、その後何の連絡も無くなった、もちろん借りたはずの部屋にも入れなかった、というトラブルが発生したことがあります。
無料メールのアドレスなんて誰でも好きなものを取れますし、その貸しているという物件が本当に存在するかどうかは、適当に送られてきた写真を見たってわかるはずもないのです。
銀行振込の場合、振込の相手の口座情報が残るので、まだ警察等が追跡することも可能でしょう。それでも、他人の銀行口座を買い取って不正に使っている場合などもあるので必ず相手が捕まるとは限りません。現金書留やギフト券などで先にお金を送れ、と言われたとしたら、さらに怪しさは増します。相手がそれを受け取って単に消えてしまっても、追跡のしようがないでしょう。
また、お金でなくても、あなたの個人情報、本名や生年月日、パスポートや運転免許証のコピー、などをメールで知り合ったばかりの相手に送るのも考え物です。上に出てきたような家賃詐欺師が、あなたの個人情報や身分証明書のコピーを使って、次の詐欺を行うという事だって考えられます。あなたが自分で名乗っている本人に間違いない、といった保証は、最終的な物件の引き渡しや契約時に相手に証明できれば十分なはずで、単にメールで問い合わせているだけなのに「身分証明書を送れ」なんて言ってくる貸主は、まず避けるべきです。
会ったこともない相手を無条件に信用しない
相手の氏名や人相はもちろん、好きなように嘘をつくことも可能です。
たとえ身分証明書のコピーを送ってきたとしても、それが本人のものかはわかりません。他人のをコピーして使ったり、パソコンなどで顔写真を加工したりしてコピーを取ることもできます。
メールや電話で何度もやりとりしても、それだけでは相手が本当のことを言ってるかどうかはわかりません。
海外や遠方から家探しをしたりする場合など、どうしても会えない、という状況でデポジットや前家賃を要求されることもあります。しかし、本来であれば、貸す側もそんな相手ではなく直接会って面接できた相手に貸したいと思うのが普通です。相手が完全に信頼できるような情報の積み上げができない場合で、遠くから引っ越しする場合は、マンスリーマンションやゲストハウスなど、一時的な住居に数週間住んで、現地でルームシェア探しをする選択を取った方が安全性は高いと言えます。
「夢のように良い条件」ほど危険
その地域の他の物件に比べてとても家賃が安いとか、掲載されている写真が旅行ガイドに出てくるホテルのような素敵な部屋だとか、ありえないほど良い条件の募集広告を見つけた場合、その募集に対してはより慎重に考えるようにしてください。
ましてや、そのような良い条件の募集が、何日・何週間も前から掲載されているとしたら、それは変ですよね? 自分が「素敵だ」「安い」と思うような物件に、他の人が連絡しないはずがあるでしょうか?
また、「猫を飼ってもいいですか」「楽器を弾いてもいいですか」「友達を泊めてもいいですか」「長期旅行の時は家賃を払わなくてもいいですか」など、こちらの問い合わせに対してなんでも「OK」と返ってくるような相手にも注意してください。
あなたがわざわざこれらの質問をするのは、それが一般的に貸し手には嫌がられたりする条件で、入居後に断りなくできないような事だからですよね? そういった難しい条件をOKする場合、物件の家賃は周辺の相場よりもずっと高くなるのが普通です。何を訊いても「大丈夫です」と答えるような貸し手は、もしかしたら実際に貸す部屋などどこにも持っていないから、好きなように返事ができているのかもしれない、と考えてみてください。
物件・部屋が実在するかを確認
ルームシェアで借りる話が煮詰まってきたら、その家やマンションの住所や部屋番号を尋ねましょう。住所も知らずに家を借りる決断はできません。ここで住所を教えることを渋ってきたとしたら、まず怪しいと思っていいでしょう。
住所を知ったら、次は見学です。よほどの経験者でなければ、見学もしていない部屋を借りるべきではないでしょう。今は遠方に居てどうしても見学に行けない、という場合でも、たとえば近くに住んでいる親しい知人に見学に行ってもらうという手も取れます。
また、住所やマンション名がわかったら、ネットで検索してみましょう。「マンション名 〇階 賃貸 敷金」などで検索すると、同じマンションで貸している別の部屋が見つかることもあります。
ひどいのになると、今自分が借りるはずの同じ部屋が、まったく違う高い(というかそれが普通の値段なんですが)で出ている場合もあるかもしれません。詐欺師が、ネットにある物件情報や写真を使って、嘘の募集を作ったのですね。
ネットで同じマンションの別の部屋や、近所の似た条件の物件を見つけたら、それと自分の借りる条件を比較してみましょう。一般の賃貸で会社や家族の保証がついた人に7万円で貸している家ばかりなのに、サブレットで借りたくて長期借りるかもわからないあなたに4万円で貸してくれる、なんてことがいったいぜんたいあり得るのでしょうか?
会って部屋を見せてもらっても、まだ詐欺の可能性はあります
対面で会うことができて、物件の見学ができてさえ、まだあなたが騙されている場合というのもあります。
自分の持ち物でもなんでもない他所の物件に案内して、そこを貸し出す詐欺師というのも実在します。
詐欺師が正式に(偽名などを使って)一つの物件を借り、そこを同時に何人もの人に見せ、それぞれからデポジットや前家賃を受け取り、いなくなってしまう、という場合もあります。また、空いているマンションやアパートには、別の不動産業者がお客を案内する時のためにダイヤル錠で鍵が掛かっていたり、玄関前に合鍵が隠してあるような場合も多いので、その鍵を見つけてあたかも自分の所有物件であるように見学させる、といったことも無理ではありません。
ルームシェアの場合はその場所に住んでいる他のルームメイトとも会って話ができるように調整すべきですし、サブレットや通常貸しで単なる空き部屋に案内された場合には、相手が本当にその物件を貸す権利を持っているのかを確かめなければいけません。いろいろな確かめ方はありますが、例えば、
- 他のルームメイトとも会う
- 持ち主だ、というなら不動産の登記情報を取る(オンラインで400円弱で閲覧できます)
- 借り主だ、というならその貸し手や不動産屋に確認する(大家の許可を取らず勝手に又貸ししている場合もこれでチェックできます。こういう場合は後で巻き添えで追い出されることもあるので)
- 本業が会社員だ、というなら、社名や部署名を訊き、電話等で在職確認もさせてもらう
- 親や知人の代理で貸している、というなら、その親や知人にも連絡させてもらう
- 入れ替えに出ていく人、前に借りていた人、さらにその前に借りていた人を紹介してもらい、電話やメールで確認する(もちろん偽物を紹介することもできますが、関係者が増えるほど詐欺だったら詐欺師側のコストも増えるので嫌がるはずです)
- 身分証明書を見せてもらう(コピーやメールを貰うのではなく、本物を見た方が精度は高いでしょう)
確信が持てない時は通常の賃貸も検討する
不動産仲介業者を通して一般の賃貸住宅を借りるのは、ルームシェアから見れば高く見えるでしょう。一か月分の仲介手数料や数か月分の敷金・礼金を避けたい気持ちもわかります。
しかし、免許を取って国や都道府県の許可を得て営業している不動産屋は、その仲介料と引き換えに安全と保証を提供しているのです。
住んだこともなければ知り合いもいないような地域へ引っ越すといった場合、初期費用が安いからといってルームシェアにこだわりすぎるのも危険でしょう。これまで書いてきたリスクは、何回もルームシェアの引っ越しをして慣れてくれば避けられるものではありますが、自分を過信して騙されるよりは、コストが掛かっても慎重に行ってみるというのも大事ではないかと思います。