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家を借りて住むときに、家賃(の全額や一部)を補助してくれる会社があります。家賃補助や住宅補助という名前で呼ばれることが多いでしょう。「ルームシェアで借りている時に、家賃補助はどうなるのですか?」 という質問が来ることがあります。

家賃補助はその会社の社内制度なので、最終的には会社が決める

家賃補助制度は、会社が福利厚生として行なっているものです。ですから、どのような社員をどのように支援するかは、その会社ごとに決めています。ですから、「どの会社でもルームシェアはこう扱います」といった統一したルールはどこにもありません。まずは、会社のルール、社内規定を調べることが重要です。

しかし、社員がルームシェアをして借りている、という状態は、これまでの日本ではそれほど一般的ではありませんでした。ですから、社内規定に「ルームシェアの場合はこうする」という取り決めが書いてあることはほとんどないでしょう。ですので、実際には、家賃補助の目的や、一般の賃貸の場合の扱いをもとに、あなたのルームシェアの場合に家賃補助をどうしようか、というのを決めることになる場合も多いでしょう。

社内のルールで明示的に書かれていない時、会社の立場からすれば支出が減ることは嬉しいことでしょうから、家賃補助を出す方向への判断は出にくいでしょう。ですから、あなた自身がちゃんと理論武装して、これこれこういうことだから、通常の賃貸で借りているのと同じ様に補助が出るべきである、と主張する必要があるでしょう。

家賃を幾ら払って借りている、という証拠を入手する

会社に対して、家を賃貸していて家賃を払っている、ということが証明できれば、家賃補助の対象であることは明らかになります。一般の賃貸に比べて、ルームシェアでは「借りているという証拠の契約」や「家賃を払っている証拠」が揃っていないことがあり、これが、「ルームシェアだったので家賃補助がもらえなかった」という体験談が存在する理由かと思います。

会社は、絶対に家賃を補助したくない、というわけではありません。そういう制度を用意しているわけですから、正当な社員には支払いたいでしょう。会社が恐れているのは、本来貰うべきでない人が不正に受け取ることなのです。あなたは、あなたが正当に受け取るべき社員だということを会社に説得しないといけません。

前述したように、家賃補助のルール(規定)は会社によって様々ですから、会社が社員に要求する「証拠」も様々です。すべてのケースをカバーはできませんが、よくある「証拠」について見ていきましょう。

住民票

家賃補助に限らず、会社があなたに住民票の写しを要求することはあるでしょう。あるいは、運転免許証やパスポートなどの身分証明に書かれた住所を確認させてくれ、と言ってくる場合もあります。

あなたが実際にはどこに住んでいるかは、交通費の清算などにも関わってきます。そこでの不正を防ぐには、あなたの住所が本当にそこであることを会社に証明しなければいけません。

「ルームシェアだとその住所で住民票が取れないのでは」という質問をよく受けますが、それはまったくの誤解です。詳しくは、ルームシェアと住民票、にまとめてありますのでそちらをお読みください。ルームシェアの場合の住民票は、基本的にはあなたが世帯主となったあなただけの世帯の住民票となります。

賃貸契約書

会社が家賃を補助するためには、その家賃が本当の家賃であることや、それをあなたが支払っていることが証明されなければいけません。

そのためには、賃貸に関する契約書を作成する必要があります。不動産屋で契約したときは、何ページもあるものものしい契約書をろくに読まずにハンコを押したりもするでしょうが、長くて難しいものである必要はありません。契約の内容(誰が誰に貸しているか)、金額(月額いくらで貸しているか)、契約者両方の氏名やハンコ/サイン、契約日の日付、などがあれば証拠としては十分でしょう。普通は同じ内容で2通を作成し、貸す側と借りる側で一通ずつ保管します。

「個人間の貸し借りでは、家賃補助は貰えないのではないか?」という質問を受けたこともありますが、一般の賃貸住宅でも、間に仲介業者(不動産屋)が入っているだけで、大家は個人であることは多いです。貸し手が個人であること自体は問題にならないでしょう。

簡単に口だけで受け入れるようなルームシェアもあるでしょうし、それでこれまでトラブルにならなかった、とか、契約書なんて面倒だ、とシェア相手に言われたとしても、貸し借りの条件をきちんと書面にしておくことは、家賃補助に限らず重要です。ここはシェアメイトを説得しましょう。

家賃の振込先

会社によっては、社員に家賃補助を与えるのではなく、その社員が借りている大家に直接補助分の金額を振り込むというところもあるでしょう。この場合、あなたが家賃を支払う相手の情報が必要となります。

普通は、賃貸契約書に書かれている貸し手・大家が、あなたの家賃の支払先でしょう。その場合は特に問題ないと思います。問題は、あなたや他のルームメイトが全員の家賃を集めて、それをまとめて大家に支払うような場合です。あなた自身は、貸し手の大家ではなくルームメイトに自分の分の家賃を支払うのだとすると、会社は誰に払っていいのかわからなくなります。

自治体の家賃補助も同じ

会社ではなく、市町村や区などが家賃補助を出してくれるという場合もあります。目的は過疎対策だったり、若くて家が無い人の支援だったりと様々でしょう。東京23区内でも、条件によっては家賃補助が出る区があります。ルームシェアしているところやこれからするところの自治体に家賃補助がないか、調べてみることをおすすめします。

この場合も、会社と同じで、ルームシェアの場合に家賃補助を出すかどうか、といった細かいケースまでは決められていないことが多いでしょう。会社の場合と同じく、ルームシェアだからどう、ではなく、借り手が誰で自分は借り手で、こういう契約で幾らの家賃である、ということを主張する必要があります。

事例

AさんとBさんは、ルームシェア掲示板の「仲間募集」で知り合い、一緒に物件を探してルームシェアをすることになりました。二人の会社の真ん中あたりにあるC駅に、家賃10万円の2DKのマンションを見つけることができました。

Aさんの会社では、家賃が4万円を越えた時には2万円まで、家賃補助が出ることになっています。また、Bさんの会社は、20代の間は月額1万円の住宅手当が一律で出ます。

それぞれの会社で、ルームシェアした場合の家賃補助はどうなるか、担当者に問い合わせましたが、ルームシェアに関しての前例がないのでわかりません、と言われました。AさんもBさんも、家賃補助が出ることを当てにして10万円の部屋を探したので、もし出ないとなると後々たいへんそうです。

それぞれの会社で、家賃補助の申請に必要なものを訊いたところ、家賃の金額がわかる契約書が必要だ、となりました。そこで、まず最初の案として、10万円の物件の大家さんに、AさんとBさんそれぞれがマンションの半分を借りる契約を2つ同時に結べないか、不動産屋を通して相談しました。しかし、これは大家さんが嫌がりました。ただ手間が倍になるだけでメリットがないというのです。

そこで、次に、Aさんが10万円の物件全体を借りる契約書を、大家と作ることにしました。この契約書があれば、Aさんは4万円を2万円以上超えているので、Aさんの会社から2万円の家賃補助がもらえます。

そして、Bさんは、Aさんを貸主(大家)とする、マンションの中の一室の又貸し(転貸)の契約を結ぶことにしました。この契約には、AさんとBさんだけが出てきて、元の大家は関係ありません。Aさん・Bさんがルームシェアで借りること自体は大家さんから承諾を得ていますので、あくまでその枠内での貸し借りの形態がどうなるか、という形式の話です。

Bさんは、Aさんからマンションの小さい方の部屋を4万円で借りる契約書を二人で作り、はんこを押しました。Bさんは、自分の会社にこの契約書を見せて、自分が家賃を払って部屋を借りていることの証明とし、1万円の住宅手当を貰うことができました。

注意点

上記の場合は、それぞれが負担する家賃が、家賃補助が貰える条件を満たしていたので何の問題もありませんでした。

しかし、例えば、AさんとBさんがトータルで10万円の家賃しか払っていないのに、AさんがAさんの会社から家賃10万円に相当する補助を、BさんがBさんの会社から家賃10万円に相当する補助を、貰ったりすれば、これはどちらの会社からみてもルール違反でしょう。ばれた場合には詐欺等で訴えられたり、解雇されたりしても不思議ではありません。